愛なき道

オリジナル小説「二人の戦女神」と「リリカルなのはシリーズ」の二次創作を中心に活動中

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11th Action「変わらないもの」  

 九月中旬のある日。俺、畑山雄は野球部の練習でかなり遅くまで学校に残っていた。




 

 
 
 
 練習が終わってグランド整備を終えてから制服に着替えて帰宅しようとしたんだ。でも、気づいたら、なんでかわからないんだけど、上杉の家の近くまで足を運んでいた。
 先に言っておくが、俺は夢遊病とかそういう類いの病気は患っていないからな。健康優良児そのものだ。あ?誰が豆粒ドチビだって!?
 とと、そんなこと言っている場合じゃない。何かすんげぇ嫌な予感しかしないんだよな。さっきからこう……胸の辺りにモヤモヤがずっと渦巻いているような感じ。ああ、気持ち悪い。

「相変わらずここは静かだよなぁ。上杉の奴よくこんな所に一人で生活できるな」

 小学生の頃から一人暮らしをすることになった、俺にとって相棒とも呼べる存在の友である上杉の凄さを改めて思う。表情には出さないが、雨の日は少し寂しそうな雰囲気を醸し出しているのは『あの日』以来ずっとだ。
 でも最近では、雨の日でも普通な感じになりつつある。何があったかは聞かないけども、『あの日』のことが吹っ切れたような印象だ。いい事だと思うが、友としては相談してくれないのは寂しいんだぜ、上杉?

「ん、何かいる?」

 ふと視界の隅で何かが動いたのが見えた。それと同時に違和感を覚えた。先ほどまで上杉の家付近の森を歩いていたはずなのに、どうして今俺は『草原に立って』いるんだ?それに今日は曇りだったはずだ。なのにどうしてだ?月の光が眩しいのは――

「おわっ!」

 頭上を何かが通り過ぎた。目の前を見れば、何かロボットみたいな物体が立っていて、その腕の先端は鋭い鎌のような物になっていた。今、頭上を通り過ぎたのはあれのようだ。あれで刺されたらすんげぇ痛そうなんだけど、これって「わるいゆめ」だよな?きっとそうに違いない。毛布のような平和がきっと目を覚ました時に――

「うわっ!」

 目の前のロボットみたいな物体――つか、ロボットそのもの――がその鎌みたいな腕を俺目がけて振り下ろしてきた。それを寸でのところで何とか避けたのはいいけど、その鎌が右頬を掠った。掠った頬を右手で触ってみると、右手には血が付着していた。

「え……?」

 一瞬固まる。これは夢だ。今ので血が出てくるなんてどこかの小説や漫画じゃあるまいし、常識で考えて非現実的だろ。それに、さっきまで夜だったのに、昼間の草原に立っているなんて夢以外ありえないじゃないか。こんなリアリティ過ぎる夢なんて見たことないんだぜ!?

「っ!?」

 またロボットが俺目がけて鎌を振るってきた。それを大きく右へ避けるようにヘッドスライディングする。着地のことを考えていなかったから派手に転ぶように前転をする。……イテェ。こんなに体中が痛いということは夢じゃない?んなバカな。
 気づいたら今までいた所と違う場所にいて、変なロボットに殺されかけている?そんな馬鹿なことがあってたまるか。そもそも

「こんな人型に近いロボットが実用化されてるなんて聞いたことねぇよ!!」

 こんなロボットが実用化されているなら、ガン○ムとか実用化も夢じゃねえ。いや、あの国民的ロボットも実現可能かもしれない。俺としてはあの「0083」に出てくる「ソロモンの悪夢」が最後に乗っていた「ノ○エ」を是が非でも実用化して欲しい。

「って、んなこと考えている場合じゃねぇよ!!」

 迫ってくるロボットに背を向け走る。カッコ悪いが、生き残るためには逃げるしかない。練習で疲れている体に鞭を打ちつつ全力で走る。後ろからロボットは静かに、それでいて俺とほぼ同じスピードで追ってきている。

『さて問題です。機械と生身の人間。同じ速度で走った場合どちらが先にバテるでしょうか?……答え、生身の人間。あったりまえですよねぇ!』

 と、頭の中で某スマイルなギャング団の副団長の声が聞こえた気がした。ああ、もう。こんな緊迫した状況なのに俺の頭は天国逝っちまってやがる!

「ぬわっ!」

 右足に何かが引っかかって派手に転んだ。すぐさま立ち上がるために、右足に力を入れたら激痛が走った。どうやら今ので右足を痛めようで、力を入れると激痛が走る。これに似た感覚を体験したことあるな。確かあれは、一塁を駆け抜けようとしてベースを踏んで挫いた時だったか。それと同じ痛み――つまり捻挫――

「あ、あはは……」

 こんな時に限ってツイてない。振り向けばそこには、頭上に鎌を構えたロボットが一体いた。あれが胸を貫くと考えると、どこぞの『鞘の守護』がある人を除けば即死なのは間違いないよなぁ。夢とはいえリアリティありすぎ。

「はぁ。夢なら今のコケたところで醒めてくれたっていいよな、ハハハ……」

 もう笑うしかない。ここで人生が終わる。だって、こんな見渡す限り草原の場所で助けてくれるような人影は見えないし、友が助けに現れる確率なんてZERO。俺が突如反撃というか逃げ出せるアイディアが閃くこともありえねぇ。上杉なら閃きそうだけど、今その上杉は居ない。つまり……

「現実は無常也……ってか?」

 何度も言うようで悪いが、もう笑うことしか出来ない。小さい頃「あいつ」と約束した甲子園に行くことを果てせないまま俺は死ぬのか?それと上杉と馬鹿なことをして笑い合うことも。……あいつ俺がいなくなったら泣いてくれるかねぇ?ああ駄目だ。上杉が泣くなんて想像できない。あいつはいつも無表情に近い顔しるほうが似合ってるわな。

「わりぃ上杉。もう一緒に野球できねぇわ」

 その呟きの直後、ロボットが鎌を俺目がけて振り下ろしてきた。俺は襲ってくるはずの痛みに耐えるために目を瞑った――


「すまん、遅れた」


 聞きなれた男の声が聞こえたかと思った次の瞬間に、甲高い金属音が響いた。な、何が起きたと思い瞑っていた目を開けると、そこには見たことのない服装で黒いマントを靡かせ、右手に構えた日本刀で鎌を受け止めている友――上杉――がいた。



      リリカルなのは――ロンリースターズ――
         11th Action「変わらないもの」





 あいつ――上杉翔――と俺、畑山雄が出会ったのは小学校二年の春だった……かな。偶然同じクラスになって、最初に声をかけたのが上杉だったのを記憶している。
 そん時の上杉ってのが、小学校二年生だから七歳だか?その程度の年齢なのに、他の連中と違って静かというか無口な奴だったと記憶してる。でも、話してみればどこにでもいる普通の子供だった。野球好きで、読書好きで音楽好き。それと本人は否定しているけど負けず嫌いな面があった。ああ、あと歴史好きってのもあったな。
 そんな上杉と友達になる前に喧嘩をしたことがあった。しかも殴る蹴るの大乱闘を起こして、二人して先生から二時間ぐらい怒られたっけか。喧嘩をする原因は確か……なんだっけな。もう、ずいぶん前の話だからよく覚えていないけど、先生にキツく説教されたのは覚えている。
 それ以来あいつと友達になって、学校生活を楽しんでいた。でも、一年後の春が終わった五月中旬だったかに悲劇が上杉を襲った。俺も詳しくは知らないけども、上杉の母親が何者かによって殺されるという事件が起きた。ニュースでも取り上げていたけども、今も犯人は捕まっていないらしい。
 その日から二週間。亡くなった母親以外身寄りのいない上杉は、海鳴市の上杉のような子供が住む施設で色々と手続きを行っていたそうだ。今は理解できるけども、当時小さかった俺には全く理解出来ない状況で、ただ単に「上杉と遊べない」と俺は理解していたのを覚えている。
 その事件以降、上杉の無口さに拍車がかかったのを俺は今でもはっきりと覚えてる。今はそうでもないが、会話していても無表情になったのもこの頃だ。あまりにも無表情というか感情が表に出てこなかったから、俺が無理やり遊びに連れて行ったりして遊んだんだよな。
 まあ、そんなこんながあった中で上杉は一人で暮らすことにしたらしくて、時たま泊まりに行って一晩中ゲームをして遊んだな。あいつの料理、何気に美味しかったのには驚いたな。小学四年で天ぷらとか一人で作っていたのを見たのには呆然とした記憶がある。そうそう、泊りに行ったり無理やり遊びに連れていった影響か、徐々に感情が表に出るようになったんだ。あん時は、前みたいな上杉に戻ってよかったと安心したな。
 それと、夏休みにはクラスの数人で「対夏休みの宿題合宿」なんてやったな。ほとんど上杉が教え役になって、俺と他の連中がそれを聞いて問題を解くって感じだったな。

 ……どうしてこんなことを今、思い出しているかだって?それまで普通に友として接してきた奴が目の前で、日本刀を振り回しながらよくわからん「光の玉」でロボットを攻撃しているのを見ちまえば、過去のことを思い出したくもなるだろ?つうか、なるんだよ。目の前で起きていることが非日常過ぎて、日常のことを回想して現実から目を背けたくなるんだ。
 ああ、本当にこれが「わるいゆめ」であってくれればいいのに。あ、上杉が一瞬で十メートルぐらいの距離を移動したぞ。なにそのバトル系アニメみたいな瞬間移動。お前は飛◯か!もう理解できねぇよ。つか、理解したくねぇ。

「大丈夫ですか?」

「え?」

 右足を痛めて立ち上がるのことのできない俺の隣に、いつの間にか金色の髪をツインテールにした、どこか軍隊の上官をイメージさせる服を着た女性がこちらを見ていた。って、ちょっと待て。どうしてこの人がこんな所にいるんだ?

「え?フェイトさん?」

 俺は驚きのあまり上杉の知り合いであり、男子の中でも(色んな意味で)評価が高い女子生徒の名前を口に出していた。

「えっ?……は、畑山くん!?」

 と、今気づいた様子の男子の中で女神と称されているフェイト・T・ハラオウンさん。と言うか、なんでコスプレなんてしているんだ?ツインテール姿のフェイトさん初めて見たなぁ。しかも可愛いし。これは夢じゃなくていいな。と言うか写メとっていい?その写真を家宝にしたいぐらいだ。

「あの……畑山くん、大丈夫?」

「あ……え、ええ。右足を少し痛めた程度ですけど、他は大丈夫です」

 と、少し変な方向へ思考が言っていた俺に心配そうにフェイトさんは声をかけてきた。それに答えつつ、今は立ち上がれませんけどねと付け加えておく。まあ、精神的に少し参っているけどな。
 あ、上杉があのロボットを日本刀で言葉通りに真っ二つにしたのが見えた。もう安心して気絶していいかな?つうか、何度も言うが夢なら醒めてくれよ、頼むから。

「え、えとね、畑山くん。詳しい話しは足の治療をした後でいいかな?」

「あ、はい」

 フェイトさんが複雑な表情をしながら手を貸してくれた。詳しい話しってのはなんでフェイトさんがコスプレしているかなんだろうなと、場違いなことを思う俺。いや、だってコスプレ姿のフェイトさんめちゃくちゃカワイイんだぞ!?もう絶世の美人と言っても過言じゃないぐらいに。

「テスタロッサさんそちらは……って、雄!?」

 と、再び思考が変な方向に行っていたら上杉の声で現実(夢?)に戻された。先ほどまで十メートルを一気に移動するなどの人間離れしたことをしていたのに、息一つ乱した様子を見せずに俺がいることに驚く上杉。
 フェイトさんも困った様子で上杉に何か目で訴えていた。それはそれでいいとして、だ。上杉の家に道場があったのは知っているけど、日本刀なんて物騒な物持ってたんだなと再び場違いなことを思いつつ上杉に声をかける。

「どうした?」

 まだ驚いた様子で上杉が何かを呟くと、日本刀が上杉の手から消えた。なにこのマジック。お前マジシャンだったの?

「これって夢だよな?」

 夢の中で「夢か?」なんて聞く俺もどこか抜けているなあと思いつつ、上杉が「夢だ」と答えてくれるのを期待した。けども、その期待は上杉の言葉で儚く消えた――


「雄……残念だが、これはすべて現実だ」






「困ったね」

「困りましたね」

「……なんでこんな問題が起きるんだ」

 上から順に私、ショウ、クロノの言葉。四時間前に発生した民間人襲撃事件について話し合っているところなんだ。と言っても今は全員頭を抱えている所。
 今回の件というのは、第97管理外世界「地球」の住人である畑山くんがミッドチルダの郊外にてショウも襲われた機械に追われていたことなんだけど、畑山くんが本来住んでいるとことが管理外世界というのが、今回私たちが頭を悩ませている大きな要因となってるんだ。
 どうして畑山くんがミッドチルダにいたのかという所から話しが始まるわけなんだけど、原因は現在不明。エイミィが必死になってデータを収集中なんだけど、クロノが言うにはあまり期待できないって。

「ところで、雄は大丈夫ですか?」

 長い沈黙を破ってショウが破った。さっきから落ち着いた様子じゃないから、誰が見たって畑山くんのことを心配しているんだってことが手に取るようにわかっていたけども、本人の口から聞かれるまで黙っていろとクロノが話し合いの最初に念話してきた。私もどのぐらいの怪我か知らされていないから言えるわけがない。

「ああ、彼なら今医務室で右足の治療を受けているはずだ。軽度の捻挫だと聞いているから安心しろ」

「そうですか……」

 少しホッとした様子で椅子の背もたれに体を預けるショウ。私も軽症と聞いて胸をなで下ろした。あの時、少しでも到着するのが遅くなっていたら畑山くんは――

「それで翔。どうするつもりだ?」

 クロノの言葉で私は今考えていたことをストップさせる。クロノの方を見ると腕を組んで片眼を閉じてショウを見ていた。「どうするつもり」ってのは畑山くんへの対応のことだよね。ショウは少しだけ悩んだ様子を見せたけど、顔を上げてまっすぐクロノと私を見て

「全て話します。あいつはきっと……いや、絶対理解してくれるはずですから」

「それで拒絶されるかもしれないかもしれないぞ?」

 クロノが心配そうにショウを見る。私やなのはもアリサやすずかに説明する時も緊張と言うか、もし拒絶されたらどうしようと思ったな。私はアリサやすずかと友達になってほんの数カ月しかたっていなかったから尚更。
 私の心配は杞憂に終わったけど、ショウの場合畑山くんがどう受け止めてくれるかわからない。医務室に行くまでまでほとんど放心状態だったから。

「ええ……でも、話さないより話して拒絶された方がまだ救いはありますから」

「ショウ……」

 無理に笑顔を見せるショウに私はなんて声をかければいいかわからなかった。クロノも私と同じようで黙ってしまった。ただ、ショウは最悪の場合を覚悟している。それによって畑山くんと友達じゃなくなっても仕方がないという様子。本当にそれでいいの?

「ええ……そもそも中学を卒業すれば、必然的にあいつとは離れる予定でしたし」

「え、それって……」

 ミッドチルダに引っ越しするってことだよね?ショウは頷き、そのほうが管理局員として動きやすいと説明してくれた。確かにそうだ。私やなのは、はやても中学卒業後にはミッドチルダに行くと決めている。もちろん時々地球に帰るつもりでいるけど。

「私も似たような感じですよ。雄を『こちら側』のことに巻き込まないようにしようと考えていたのですけどね」

 全て後手に回ってしまいましたけどね、と大げさに肩を竦めるショウ。巻き込みたくないという気持ちはよくわかるけど、現状ではショウの言うとおり無理だね。
 目の前で魔法を使うところを見られているのもあるけど、畑山くんは管理外世界からミッドチルダへ次元を越えて移動をした。その直後にミッドチルダの技術で作られたと思われる、五月にショウを襲ったガジェットに襲われている。
 畑山くんが言うには夜七時四十五分ごろに、ショウの家の近くの森を歩いていたら、いつの間にかミッドチルダ郊外の草原に立っていたということらしい。ショウの近くの森を調べたけれども、転移装置などの類は落ちていなかった。
 管理局にもわからないように人為的に畑山くんが転移されたと考えるべき――とはクロノとショウの発言。二人して同じ意見に私は行きがあっているなと思いつつも、状況を整理する。

「雄に対しての説明は私に任せて頂けませんか?」

「……わかった。フォローは任せてくれ、ショウ」

 と、珍しくフォローを自らするとクロノが言った。あまりないことだし、認めている人しかそういうことは言わないクロノ。つまりそれなりにクロノがショウを認めているということ。ちょっと意外だったかな。ショウとクロノって少し似ているから反発しちゃうんじゃないかと心配していたんだけど、要らない心配だったみたいだ。
 私もショウに任せることに同意して、ショウは説明をしに医務室へ行ってしまった。それで、クロノ。何かあるんだよね?

「ああ、これを見て欲しい」

 と、クロノが一枚の用紙を私に渡してきた。その用紙には今回の畑山くんがミッドチルダへ転移した原因は不明だけども、襲ったロボットについて記述されている箇所を読んだ私は驚きを隠せなかった。

「く、クロノ……これって」

 私が何を言いたいか理解したクロノは大きく頷いて

「つい先ほどだが、君の母、プレシア・テスタロッサと関わりのあったとされる広域次元犯罪者ジェイル・スカリエッティのと思われる研究ラボから、ショウの件と今回の件で同型のロボットが発見された。今回の件もスカリエッティの犯行と見ていいだろうな。ただ、何がしたいかはわかっていないが」

「そっか……もう少し詳しい捜査をしないといけないね」

 まさか、こんな所でスカリエッティの名前を聞くことになるなんて思っていなかった。私の名前の由来となった人造生命体プロジェクト「F.A.T.E」の関係者というのがスカリエッティが起こした別事件を調査中に知った。現在はどこに潜伏中かわからないけども、人造生命体やガジェットを作っているようだというのが五月の事件以降にわかった。握った手に自然と力が入る。

「フェイト……」

 クロノが何か言いかけて思いとどまる様子を見せた。クロノが何を言いたいか理解した私は笑顔を見せて大丈夫だと伝えた。今回のレポート書いてくるとだけ伝えて、私も部屋を後にした。




 一人管理局本局の廊下を歩く。これから雄のいる医務室に行って、今回の件と魔導師について説明しないといけない。小学校時代から一緒の雄に隠し事をしていたことに自己嫌悪になっていた。
 でも、魔法というのは地球では幻想の物。その幻想の物が使える人間がいたらどうなるかは、先程、クロノとテスタロッサさんらと話していた中でも出たが、確実に現代版魔女狩りか人造魔導師の生成が行われる恐れがある。
 もしそれらが現実に起きてしまったら、現在の世界情勢が一気に変化を起こして世界中が大混乱となるのは避けられない。だからこそ、五月にあのロボットに襲われた時も人がいない場所で戦っていたわけだ。しかし、どうして襲った相手が雄なんだろうと考えて深々と溜息を吐いた。

【主君、悩んでおられますね】

【長光か……。全て話してどうなるかわからなくてな】

 二人の前では「絶対に理解してくれる」と言ってしまったが、本当はそんな自信はない。だが、友としてあいつを信じたい――そう思ってしまった。感情に流されるとは典型的なダメなパターンだな。すまんな長光、こんなダメな主君で。

【いえ、その感情に流されるというのは人間であることの証かと思われます。私のようなデバイスは持ちあわせていない物ですのでよくわかりませんが】

【そう……か】

 人間であることの証か。相変わらず長光はこういう時に少し硬い言い回しをする。小学校一年の頃にも友達ができないで悩んでいたら

【そんな些細な事で悩んでどうするおつもりですか?わが主君であるなら、たとえ孤高と呼ばれようが軍神と呼ばれようが動じない精神を持っていただかないと】

 ……小学校一年に言う台詞じゃないことは確かだ。そんな昔話は今はいいか。現在をどうするかを考えないとな。と言っても全て話すのは確定しているわけだから、後は雄次第だ。

【全て話してからだな。終わるのも始まるのも】

【そうですね。……ひとつだけ言わせていただくなら、『始まるのも終わるのも』の方が語呂的に良いかと】

【……そこをツッコムか、お前は】

 長光の言葉に俺は頭痛を覚えつつ医務室へと向かった。確か医務室はこのまま真っ直ぐ歩いて行って、階段のある所を左に曲がった所にあるんだったな。
 本局は広すぎるから時々迷子になりかける時がある。特に高町さんが。先月だったかに、俺が本局に用事があってきていると時に通信してきたかと思ったら「迷子になっちゃったの」と言い出したのには呆れた。
 迎えに行って、高町さんに「もう中学三年生の終盤でそれはまずいですよ」と言っておいたが、その数日後にまた通信で「どうしよう、また迷子になっちゃったの」と涙目だったのには本当には頭を抱えた。隣にいたクロノですら眩暈を覚えていたという。本気でこの人が教導官でいいのか不安を覚えた一幕だった。さて、高町さんのヘボのお陰で、少しだけ心に余裕を持った所で行くとするか。


「……」

 現在、俺こと畑山雄は絶賛混乱中だった。コンフュを連続で唱えられてしまって、しまいにゃブラインとストップという状態異常系の魔法をかけられてしまった感じだ。混乱して頭がストップして、お先真っ暗の意味でブライン。我(おれ)ながらよく考えたものよ。ハッハッハッ!

「って、慢心王になってる場合じゃねぇ!」

 両手で頭を抱える。この二時間ぐらいずっとこの状態なのだが、医務室の金髪ショートヘアーのおば……イエナンデモアリマセン。オネエさんはニコニコ笑顔でその様子を黙って見守っていた。あの、黙って見ていられるの結構辛いんですけど?

「あ、ごめんなさいね。はやてちゃんが言ってたとおり面白い子だなと思って」

 と、テヘと小さく舌を出すオネエさん。「はやてちゃん」ってのが女なのか男なのか知らないが、俺の中に該当する人物はいないな。あ、一人いたか。あのギャグ漫画の執事の名前がはや「それで、畑山くんだっけ?」……なんでしょうか?

「ケガのことなのだけどね、三日間ぐらい安静にしていればまた運動できるようになるわ。このシャマルがきちんと治療したから安心していいわよ」

 と改めて笑顔で右足の状態を教えてくれた。そういえば、さっきまで呆然と言うより魂の抜けていたような気がする。目の前で起きたことが、あまりにも現実離れしすぎていてな……。医務室のオネエさん改めシャマルさんにお礼を言ってから、冷静に現実離れしていた上杉とロボットの光芒……もとい攻防を改めて思い出す。
 日本刀でロボットの鎌をいなしつつ『銀色に輝く光の玉』で俺の方に攻撃させないように注意を引きつけてくれていた。で、十メートルぐらいの距離を一瞬で縮めて攻撃を仕掛けたのを見て俺が頭を抱えているとフェイトさんが現れて、お互い驚いている時に勝負をつけていた。

「……駄目だ。冷静に考えても次元を超えてる」

 あのまま次元の狭間に行っていれば少しは楽だったかもしれないなあ。ただ、行った直後にあっちのギルと戦う羽目になるから、絶対生き残れねぇ。投げれば最強だけど、普通に攻撃したら最弱の武器で攻撃されただけであの世に逝く自信があるぞ。
 あれ?もしかして俺、ここにいる時点で奇跡じゃね?

「あっ、そうそう畑山くん」

 なんでしょうか?シャマルさん。

「今ね、上杉くんがこっちに向かってるって、フェイトちゃんから連絡あったわ」

「そう……ですか。上杉がこっちに……」

 つうことは、さっきの説明と俺に黙っていた何かについてを話してくれるということだと思っていいのか?というか、あいつもしかして俺があいつの隠しごとに気付いていないとでも思っているんじゃないだろうな?
 ……可能性有り過ぎて涙が出てきそうだ。小学校五年ぐらいから気づいているが、あいつがいつか話してくれると思ってあえて聞かなかった。それ以前に、あいつは隠しごとが下手すぎる。特にここ最近はそれが顕著になっている。
 学校休む理由が「体調不良」が主な理由だけども、休む前日までピンピンして普通に体育にも出席していたと言うのに、嘘をついてまで学校を休むなんて上杉らしくないなと思っていた。それに、本屋のバイトを辞めた理由も「一身上の理由」だなんて、どこのサラリーマンが辞める時の常套句だとクラスの全員でツッコミを入れたなぁ。

「失礼します」

 と、不意に医務室の扉が開く。この扉は自動ドアのようで、人が扉の前に立つと自動で開く。俺は今入ってきた人間が誰か確認する。ああ、やっぱりお前か。上杉。

「俺で悪かったな、雄」

 といつも通り腕を組んでため息を吐く。服装は先程靡かせていた黒いマントがない以外は全く変わっていないけども、上杉の態度がいつも通りだったので俺は胸をなで下ろした。これで、上杉の態度がいつもと違っていたら俺は発狂していたに違いない。つか、今の状況で既に発狂しそうな勢いなんだけど、どうしよう衝動?

「そういうボケは相変わらず滑るな、お前は……」

「滑るのはボール投げる手だけにしておきたいんだけどなぁ」

 俺の発言を聞いて上杉は心底呆れた表情でため息をついた。いつも通りのやり取りに、やっと自分のペースが戻ってきた。

「場所変えるが、問題は無いか?」

「無いぜ」

 と言うと、歩けるのかと視線で訴えてきていた上杉。俺は右手の親指を立てて「大丈夫」とアピールする。上杉は小さく頷いて「ついてこい」と言って先頭を歩く。歩こうとした時に「右足の怪我が酷くならないように」とシャマルさんから松葉杖を渡された。くっ、松葉杖なんて一生お世話にならないと思っていたのに、チキショウ。
 お互い黙って廊下を歩く。時間が時間だからか、すれ違う人はいなかった。そしてついた場所は食堂と思われるとても広い場所。上杉は俺を先に席に座らせると、飲み物を取りに行った。水か?と思っていたら、俺に気をつかってかスポーツ飲料水っぽいのを持ってきた。上杉は自分用にカップにコーヒーを入れてきて、俺の正面に座って小さく深呼吸をして、真剣な表情で

「何から訊きたい?」

 と言ったのだが、俺はたっぷり三十秒使って上杉の言葉の意味を理解した。……お前な、そんな大雑把に聞いてどうする。唐突すぎて理解できなかったじゃねぇか。

「そのぐらい理解しろ」

「いや、無理だからな?」

 無表情の上杉に俺は頭痛を覚えたけども、いつも通りのやり取りだと割りきって

「先に聞くけどよ、俺の家に連絡は?」

「それは大丈夫だ。俺の家にいることにしてあるから」

 とりあえず、明日の昼までには帰ると伝えてあるとのことで、家に帰って親に怒られるやら捜索願が出されているという事態はないらしい。というか、俺が突然上杉の家に泊まることはよくあって、俺の親も「いつも通り上杉くんの家ね?」と電話で言ってくるぐらいだしなあ。

「なら、次は――」

 次は何を聞こうか。たっぷり時間をかけて考えた結果、あれについて訊けばいいじゃねぇかと頭の中で整理がついて、俺は自分の中で核心だと思った所をついた。

「上杉、小学二年の時からずっと俺に隠していたことについて聞かせろ――」





「……うん、これでよしっと」

 パチとこ気味のいい音を立ててキーボードから手を離して体を伸ばす。ショウが畑山くんに事情説明をしに行って二時間。その間に私は今回の事件についてのレポートをまとめていた。発生日時から時間経過ごとの対応など。本当ならショウもやらないといけないんだけども……

『説明後にやらせればいい。何、文句は言わせないさ』

 って、クロノが言っていたのを思い出して、ショウに心から同情した。説明後だから終わるの明け方になっていそうだね。

「ふむふむ……え、畑山くんがこっち――ミッド――に!?」

「え……な、なのは?」

 突然、私の横で驚きの声を上げたのは、今日はOFFだったと記憶しているなのはだった。どうして本局に?

「あ、うん。ちょっとだけ本局に用事あって、たまたまここの前を通り過ぎようとしたら、フェイトちゃんの姿見えたから」

 そうなんだ。でも、突然声上げるのはダメだよなのは。今は私しかいないって言っても、ここ公共の場所だからね?そうでなくても、なのはは有名人なんだから少しわきまえないと。

「あ……ごめん」

 と、自分のしたことに気づいたようで、シュンとなるなのは。その様子がまるで小型動物のように愛らしい姿だった。そういう顔のなのはも可愛い……って、そうじゃない。今回のこと、どう思うなのは?

「うん。畑山くんがミッドに転移したのは偶然だと仮定して。あのロボット……ガジェットだっけ?が畑山くんを襲ったってのがちょっと気になる……かな」

「なのはも?」

 やっぱりなのはも気になるようだ。ガジェットが今まで人を襲ったのはショウと、GWの直前にあった事件の時ぐらい。ショウを襲った理由は今もまだわかっていないけども、五月以降に人を襲ったという事例は上がってきていない。

「しかも一機だけだったんだよね?」

「うん」

 ちょうど本局で仕事をしていた私とショウは、クロノから指示を受けて現場に急行したんだ。ショウがまず先行してガジェットの攻撃を止めに入って、私が要救護者の安全確保をするってことだったんだ。で、ショウがあっさりとガジェットを撃破して今に至るんだ。

「そっか。……フェイトちゃん。今までの事例だと、大勢って言い方もおかしいけど、多数現れていたよね?」

 なのはの言葉に私は頷く。言われてみれば、今回のガジェットの単独行動は謎が残る。それに、あの時(GW前の事件)と違って近くにロストロギアがありそうな遺跡があったわけじゃない。休日になれば、大勢の家族連れで賑わうようなキャンプ地に近い場所。たまたま今日は誰も泊まっていなかっただけの話なんだけ。

「人為的なものを感じるね、フェイトちゃん」

「そうだね」

 やっぱり人為的か。レポートに書いたけど、スカリエッティの犯行と決め付けるには早過ぎる。もう少し捜査をしないといけないね。……ところで、なのは。本局に用事って何?

「それなんだけど……フェイトちゃんに最近会えてなかったから、つい……」

 「にゃはは」と笑いつつ目を逸らすなのは。うん、なのは。私に会いたいのはわかるけども、しっかり休まないとダメだよ?本当ならもう一年はしっかり休まないといけないんだから。と少し説教じみたことを言いながら、なのはとの会話を少し楽しむ。一方で、ショウと畑山くんの話し合いはどうなったんだろうと少し不安に駆られる私であった。



「――というわけだ。黙っていてすまなかった」

「ああ、全くだ」

 全部話してくれた上杉に対して、強気に出てみる。……あれ?いつもなら「お前な……」とか言いながら頭を軽く叩いてくるのに今日はそれが無い?よくよく見れば、上杉の奴は俺の言葉を聞いたからか俯いていた。おーい、上杉さん?

「本当にすまない、雄」

 って、俯いちゃってますよ。うわーい。こんな殊勝な上杉なんて見たことねぇ。明日は槍かカリバーンでも降って来るかもしれねえぞ、おい。……冗談はともかく、本当にこんな上杉見たことがない俺はどうすればいいかわからずに黙る。
 沈黙が俺達の間に流れる。こういう時、俺が何を考えているかっていうと、野球五割、アニメやゲームのこと二割、相手と話していたこと二割、明日の昼食何食べるかが一割。我(おれ)ながらまったく場の空気が読めていないな!ハッハッハッ!……慢心王いいかげん止めよう。つか、俺は空気が読めない子じゃないからな!

『主君、畑山様も困っているようですよ?』

「えっ、誰!?」

 突如聞こえた機械的な女性の声に俺は驚く。上杉は苦虫を七匹ぐらいかみつぶした表情を浮かべて

「こいつの説明忘れてた……」

 と小さく呟いたのを聞き逃さなかった。「こいつ」ってのが今の声の主だというのは誰だってわかる。でも、姿が見えない。どこにいるんだ?

「長光、お前のせいで雄が混乱しているんだが?」

『ああ、これは失礼をしました。初めまして、畑山雄様。私(わたくし)主君、上杉翔のデバイスの長光と申します。以後お見知りおきを』

 と、上杉が首から下げている刀型のアクセサリーから声が聞こえてきた?えーと……コレハナンデスカ、ウエスギ?

「さっき説明しただろ。デバイスには二種類あるって」

 首元に下げているアクセサリーを外し、机の上に置きながら上杉は「失態だな」と呟いた。

「あ、ああ」

 確か、インテリジェントデバイスとノストレージデバイスだっけか?知能を持っているか持っていないかの差で、なんか処理能力がどうたらこうたら言っていた記憶がある。ぶっちゃけると、そんな難しい話一気に理解できるか!

「それで、こいつはインテリジェントデバイスの類に入って、俺のサポートをしてくれているわけだ」

『サポートというより、生活の世話に手を焼いております』

 上杉、いくらなんでもそんなアクセサリーに手を焼かせるなんて……。俺には到底マネできねぇ。なんて言ったら、上杉はかなりゲンナリした様子で

「こいつの言葉遊びに疲れるんだよ」

『む、酷い言い方ですね。私は主君のことを思って喋っているのですよ?』

「おい、そこ。シレッと嘘をつくな」

 俺を放置して、二人(一人と機械?)が口論をおっぱじめた。あれ?俺置いてけぼりじゃね?しばらくその様子を見ていると、すごく息のあっている二人だなと思えてきた。口論をしているはずなのに、そのやりとりの一つ一つがもう形式化されてしまっている感じ。
 これが本当の相棒ってやかもしれねぇな、と思いつつそのやり取りを静観する。そしてたっぷり五分後に俺へ説明している最中だったと思い出した上杉。とりあえず、詳しい説明はこれで終わりのようだ。
 しかし、いまいち理解できねぇ。取りあえず大雑把にまとめると、上杉は魔導師って呼ばれる魔法使いで、そのサポートみたいなことを長光って呼ばれているデバイスがしていること。それと管理局ってのが、ロストロギアってのが暴走しないように監視したり、違法な研究をしている科学者や非人道的な魔導師を追跡していたりすること。
 管理局ってのが警察機関と裁判所が一緒になっているようなところだということ。何だその三権分立無視の機関は。気にしたら負けなのか?なあ?

『ところで、畑山様』

「なんだ……えっと、長光だっけ?」

 ええそうですと答えてから長光は

『畑山様はこれから一つだけ選択をする必要があります。魔法のことを知ったまま主君と接するか、それとも魔法のことを文字通り「忘れて」主君と接することなく普通に生きていくかのどちらかを』

「おい、長光。それは――」

『主君は黙っていてください』

 デバイスに黙れって言われる使い手がいるんだなと頭の片隅で思いつつ、長光の言ったことを反芻する。魔法という存在を知っても変わらないで上杉と関わるか。それとも魔法も上杉のことも忘れて、一般人として鳴海市で生きていくか――
 何だ。思った以上に単純なことじゃないか。俺は上杉の友だ。俺が上杉のことを忘れてしまったら、誰があいつが帰ってきたときに迎えに行ってやるんだ?フェイトさんや高町さんたちか?
 いや、あの人たちも上杉と同じ魔導師だから、迎えに行くというより一緒に帰ってくる感じになるだろうから、ちょっと違う。そうなると、上杉が帰ってきた時に迎えに来てくれる人はいないってことだよな?
 帰ってくる街に友が一人もいないってのは寂しいと思う。俺が想像している以上に、な。それに小学校時代からの友人を見捨てるようなマネをすることは嫌だ。ただ魔法という、少し違うことが出来るだけの話だろ?それにさ

「魔法が使えるからって、上杉が俺の知っている上杉であることには変わらないんだろ?」

 俺は上杉を小学校時代から友として接してきた。その上杉が持っている根本的なものが、俺にとって未知の物である魔法を使っているからと言ってそう簡単には崩れないはず。『上杉が上杉じゃなくなる』なんてことはないんだ。それは簡単には『変わらないもの』なんだから。

『ええ、それは間違いありません』

 俺の質問に肯定する長光。なら、問題ない。俺と上杉が友達である。それ以上でもそれ以下でもない。つまりはそういうこと。

『それはつまり……』

「全て受け入れるってことさ。俺は上杉の友達だからな。上杉が上杉であるなら、俺の友達であることには変わりはないんだ。だから、魔法を知ったからと言ってさ、俺と上杉の友人であることには全く関係のないことなんだよ」

 と言ってニンマリと笑う。上杉は俺の言葉を聞いて十秒ぐらいポカンとした表情を浮かべるも、ニヤリと笑うと

「つくづくお前らしい意見だ。どうしようか悩んだ俺が馬鹿みたいだ」

『しゅ、主君!ですが……!』

「長光、こいつに何を言っても無駄だ。お前だって長年の付き合いで理解しているだろう?」

 椅子の背もたれに体を預けて息を吐く上杉。どうやら緊張していた糸が少し緩くなったようで、さきほどまでの重苦しい雰囲気はなくなっていた。長光がまだ何か言っているが、もう俺は決めているんだ。そう簡単に答えは変えない。
 その後しぶしぶ納得した様子の長光を宥めつつ 俺はふと疑問に思ったことを上杉に聞く。

「それで、上杉はこれからどうするんだ?」

 そう。魔法が使えて、管理局という……失礼かもしれないけども、どう見ても三権分立を否定している組織に入社(この場合は入局か?)しているんだ。高校はどうするつもりなんだろうか。

「イギリスへ留学に行ったことにして、さっき雄がいた場所……ミッドチルダって所なんだが、そこへ転居するつもりだ」

 上杉の仰天発言に俺はあんぐりとするしかなかった。それってつまり、二度と戻ってこないってことじゃないのか?

「いや、時々帰る予定だ。……ただ、長期任務とか入るからそう簡単に帰ることは出来ないな」

「その帰ってきた時に、俺とかクラスの連中に連絡は取るつもりあったか?」

 上杉の性格を考えると帰ってきても連絡しないで、普通に買い物して家で鍛錬とか言って木刀振って、またミッドチ……レダ……だっけ?に戻ってそうなんだけど。

「ミッドチルダな。……確かに当初の予定だと、雄の思っている通りだったんだがな」

『なるべく、接点を少なくして「こちら側」に巻き込まないようにとの我が主君の心遣いだったのですが……』

 それも水泡に帰す前に白紙撤回となりましたがね、と今日何度目かとなる呆れた口調の長光。なあ上杉、話し折るようで悪いんだけどさ、こいつ機械だよな?なんでさっきからこう感情が口に出てるんだよ。

「俺もだいぶ前から不思議に思っていた所だ……」

 と、頭を抱える上杉。どうやら使い手である上杉ですら謎だったらしい。と、その謎を生み出している張本人がさらなる爆弾を落とした。

『もう四百五十年以上存在していると、感情というのが知らないうちに入ってしまったのかもしれませんね』


「「は?」」


 長光の発言に俺と上杉は同時に素っ頓狂な声を上げる。四百五十年以上ですと!?えっと、現在から四百五十をマイナスして……一五〇〇年!?戦国時代から存在しているっていうのか!?

「長光……今まで忘れていたな?」

 半眼で長光を睨む上杉。その姿がどこぞの黒魔術士を思い起こさせた。そういえば、その黒魔術士の小説の続編というか、本編終了後の様子を描いた小説が出たんだよな。
 まだ買ってないんだよなぁ……と、軽く現実逃避を図る。ハッキリ言うぜ?ついていけねぇんだよ!なんだよ、四百五十年って!

『忘れていたというか、封印されていたデータの中に入っていたのですよ』

「封印?……ああ、飛行魔法の封印か」

 飛行魔法?初めて聞く単語に首を傾げる俺。それを見た上杉がすぐさま説明してくれたので、問題なく話を理解することが出来た。ただ「飛ぶだけ」なら結構簡単な部類に入るけども、空で戦闘をするとなると適正が必要となるらしい。
 何でも、空の戦闘時は頭の中で色々と考えながら魔法を制御しないといけないらしい。確かさっき説明してくれたマルチタスクだっけか?頭の中を二分割ぐらいにして、一方で勉強しつつ、もう一方で何か別のことを考えるようにするとかなんとか。全く理解していないのはご愛敬だ。

「ああ、そのマルチタスクの運用、飛行魔法の制御。それと同時に他の魔法の運用をこなしつつ体術等の使用。『ただ空中に浮かぶ』と『空戦をする』ではかなり違うってことだ」

『色々とツッコミたい所はありますが、大まかにあってますのでいいでしょう』

 と先生のようなことを言う長光。ジト目で長光を見て上杉は小さく息をつく。俺は上杉が持ってきてくれたスポーツドリンクの残りを一気に飲み干した。ずっと喋っていたから喉がカラカラだ。それと、今の話ですらついていけてないのだけど、どうすればいい?

「そんなものだ」

 と言って、上杉もカップに口をつけるが、コーヒーが冷めていたらしく小さく舌打ちをしたのを俺は見逃さなかった。

「しかし、魔法かぁ……」

 天井を見上げて俺は呟く。上杉らが使う魔法ってのは科学によって制御されているイメージで、俺が「魔法」に持っているイメージとは大きくかけ離れていた。今までの話でゲームのような魔法とは大きく違うというのは理解できた。適性が無ければ使えないということもな。

「そういえば、俺に適正あるのか?」

「リンカーコアが雄にあるかどうか?……身体検査してみないと正式にはわからないが、無いと思う」

 やっぱりそうですか。上杉が言うなら間違いない。そもそも地球には魔法が存在していないんだから、俺が使えないってのは当たり前のことか。

「普通はそうなんだが、近くに魔導師が三人もいるとな疑いたくなる……」

「上杉、お前を含めりゃ四人になるぞ?」

 身近に四人。なのはさんやフェイトさん、八神さんも魔導師だというのだから驚きだ。しかも、三人とも管理局内ではトップクラスの魔導師とか。なんでそんな人達が近くにいたのに、上杉の存在を今年まで知らなかったんだろうな?

「俺が知りたいぐらいだ」

『全くもって謎ですね』

 どうやら二人(一人と一デバイス)もわかっていないようだ。謎が謎を呼んで、しまいにゃ俺の頭がこう……「パーン」って破裂しそうで困る。それに、どうして俺が地球から全く違う次元世界(これもいまいち理解していない)に転移したのかすらわかっていないときたもんだから困ったもんだ。
 それに、今後のこともよくわかってない。というか聞くの忘れてたな。

「なあ上杉。大切なことを聞き忘れていたんだが、魔法を知ることを決めた俺はどうなるんだ?」

「それは僕が話そう」

 いきなり上杉の後ろに現れた全身黒服の俺より幾つか年上に見える男が腕を組んで、そう言ってから深々とため息を吐いていた。え、と。どちらさまで?

「ああ、すまない。自己紹介をするのを忘れていたな。僕は翔の上司にあたる、クロノ・ハラオウンだ。以後よろしく頼む」

 上杉の上司……だと……!?とっても失礼かもしれないが、上杉が人の下で働くなんて想像できない。本当に大丈夫なのか?と思いつつも、俺も自己紹介をする。それで、上杉がクロノさんにどうするつもりだと聞くと、クロノさんが言うには現地でのサポートをして欲しいとのことらしい。
 具体的には、何かこちら(地球)で問題が起きた時に宿舎と食事の用意。それと情報の提供ぐらいだとのこと。後は管理局の方で対応するからいいだとか。思っていたより制限ない?

「もちろん、魔法やデバイスのことを他人に漏らさないことが条件になるが……そのぐらいは君の中では想定内だろう?それに、君ならそう簡単に話すような人間にも見えないしな」

 と言って、いつの間にか用意してあったコーヒーを飲むクロノさん。まあ、何か知らんけども信頼されているってことでいいのか?クロノさんと話すの今回が初めてなはずなのに、そんな簡単に決めていいものなんか?

「ああ、もちろんしばらくの間は監視をさせてもらうが、人権やプライバシーの保障はするから安心してくれ。監視役も上杉だから、安心できるだろ?」

「なっ、聞いてないぞ、クロノ!?」

「今言っただろう?」

 と、ドラマなどで悪役がするような笑みを浮かべるクロノさん。それを見てどうにでもなれとでも言いたげに右手で額を抑えてため息をつく上杉。すげぇ。あの上杉が反論もせずに速攻で諦めたぞ?これは一大事だ。いや、もう駄目だ、人類の滅亡だ。明日には直径四百kmの隕石が時速七万kmで地球に激突するに違いない。

「雄……お前が俺の事どういう風に見ていたかよぉぉぉくわかった。……後で覚えていろよ?」

 と、組長も裸足で逃げ出しそうな”殺す笑み“を浮かべる上杉。いやだなぁ、上杉。俺特有のお茶目なジョークじゃんか。そんな笑みしてるとフェイトさんに逃げられちゃうぞ?
 と、なんてと言ったら、なんでかわからねぇけどクロノさんに睨まれたんだぜ?なんでさ?
 それを見た上杉がクロノさんとフェイトさんが義理の兄妹と説明してくれて、そのことに衝撃を受けた俺を見たクロノさんが

「騒がしい男だな」

 と苦笑を浮かべていた。そりゃ、あんな美人の義妹がいるだなんてどこの漫画の主人公だと言いたい。色々とあるようだしあまり深くは聞かないけども、俺と上杉の友人関係が今後も継続していくことになったのには一安心だ。
 上杉が魔法を使えることを俺が知った数カ月後、上杉があんなことになるなんてその時俺は知る由もなかった――




「あら、ドクター。今度は何の用かしら?」

 突如目の前に開かれた通信画面。相手はドクター、スカリエッティだった。私はうんざりしつつ、狂気じみた笑みを浮かべているスカリエッティにそう言った。

『なに、君の言っていたスクラップとやらが、私の最新技術を使った機械をほぼ瞬殺……という言い方もおかしいが、破壊してくれてね。本当にあれがスクラップなのかと、君を問い詰めたくてね』

 また、あのスクラップのこと……ね。そろそろ壊れる時期だと思っていたのだけれども、粘るわね。もうデータ取っていないから、あのスクラップの状態がわからないからなんとも言えないのだけれどもね。

『壊れる?どういうことか説明願えるかな?』

 と興味津々のスカリエッティ。ああ、こうなったこいつはどんなこと言ってもシツコく聞いてくるのよね。それがウザイの分かっているからタチが悪いわ。

「あれはまだ初期のスクラップなのよ。だから寿命というより、活動時期が短いはずなのよ」

『なのに、もう十数年以上成長しながら生きていると?』

 スカリエッティの言葉に頷く。オカシな話よね。今までの研究データだと、もう数カ月前には生命活動が止まっていないといけないはずなのよ?データを取っておけばよかったかしらね。

『確かに取っておけば良かったかもしれないね。だが、私の好奇心を動かすには程遠いがね』

「ええ、そうでしょうね。今ドクターが捜している、古代ベルカの王の遺産『ゆりかご』の方が興味あるでしょうね」

 そう言ってから私は、彼が現在やっている研究の一つである『戦闘機人』のことを思い出した。確かに、あれなら管理局のトップレベルの魔導師ですら手玉に取ることはできるかもしれない。でも、もしあのスクラップがこのまま成長していけば確実に大きな壁となるだろう。
 スクラップとはいえ、私が”育てた”のだから。真っ正面から戦って、引き分けることはあるとしても負けることは絶対にない。もし負けたとしたら、それこそ『スクラップ』だったということだろう。このことをスカリエッティに言うつもりはさらさらないけども。

『ふむ、スクラップについてはわかった。それで君の研究の方はどうなっているんだい?』

 と、話を変えてくるスカリエッティ。私の研究……ね。ほとんどわかっているんじゃないかしら?

『大体予想はつくけども、君の口から聞きたくてね』

 予想がつくなら聞くなと言いたいのをグッと堪える私。はあ……なんでこんなのと知り合いなのかしらね。これも全て『あの人』のせいね。

「あのスクラップとは違った人物のDNAが入手できてね。今試しているところよ。実用化には数年掛かりそうだけどもね、きっと面白いことになりそうよ」

 と言いながら私は後ろに設置されている三つの生体ポッドに目をやる。数年後、きっと面白いことになるだろうと期待を寄せながら――





Next Action is...
「火ノ鳥のように」


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