愛なき道

オリジナル小説「二人の戦女神」と「リリカルなのはシリーズ」の二次創作を中心に活動中

スポンサーサイト  

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Side Stage02「恋のサマーセッション」  

 夏休みもそろそろ終わろうとしていたある日。
 俺、上杉翔は海鳴市を離れ、新潟県は上越市にやってきていた。



 なんでまたそんな所に俺が来ているか。その理由はこの上越市には春日山城跡地なるものがあって、先祖である上杉謙信の墓があるからだ。前々から一度墓参りに行きたいと思っていたので、今回クロノに頼んで三週間に及ぶ教導が終わった四日後に連休を取らせてもらい、現在上越市春日山にある林泉寺へ向かって歩いていた。
 ただ、残念なことに毎年行われている「謙信公祭」は三日前に終わってしまっていた。今年もあの某ヴィジュアル系の方が謙信役を演じ、大盛況だったと地元の方が言っていた。

「む?」
 
 謙信の墓へ向かう途中の道を歩いていると、ジーンズの右ポケットにいていた携帯が鳴る。誰からだ?携帯を開いて画面に表示された文字を見て俺は出ないでおこうかと思った。

「どうして休みの日を狙ったかのように電話してくるんだあいつは……」

 出ないと出ないで、後日酷い目になるのは明白。俺は深々と溜息を吐きながら渋々電話に出る。

『やっほー上杉。お前どこに何時(いつ)?』

「意味不明なこと言うな、雄。それで何の用だ?」

 偶然にも俺以外に歩いている人はいないので歩きながらでもよかったが、少し歩き疲れていた所だったので立ち止まり、電話の向こうの雄と会話をする。しかしあいつ、最後の夏の大会終わってから毎日のように電話してくるな。しかも、暇な時間帯を狙っているかのように……だ。

『いやさ、お前「旅にでも出ればいいじゃぁぁぁん♪」とかいってフラリと旅立ちそうだし。もしこっちにいるんだったら明日面白いことを『とある野球選手の送球技術(レーザービーム)』じゃなくて……とあるメンバーでする予定なんだよ』

 歌うな馬鹿雄。しかし面白いことだ?どうせ、以前やった「三日間ぶっ続け実況パワ○ルプ○野球ペナント大会」だろ?今思い出してもあれは地獄だった。百四十四試合(日本シリーズとか入れればもっと多い)もあるペナントを三日間で終わらせるという無茶苦茶な日程で行われ、三日目の最後の五時間は参加者全員無言で試合をしていた――という悪夢のような大会だった。
 しかも……しかも(ここ強調)その間の食事は俺が用意したという。俺を除く参加者全員に「場を読めよ」と言いたくなったが、そこはもう大人になるんだ。グッと堪えた。ただ、俺の鍛錬(木刀振るだけの鍛錬だが)に「水を差す」のだけは止めて欲しかった……。

『それじゃないぞ上杉。「違う違う、君は僕とは違う」ってやつだ』

「そんなマイナーな曲を唐突に歌うな」

 なんで某ロックユニットの十一枚目のアルバムの曲を選んだ。誰がどう考えても選曲ミスだ。そもそも、その曲は俺が教えなきゃ知らないままだったじゃないか。

『それはさておいてだ。明日、何をするかというとだな……高町さんとその彼氏のデートの様子を見に行く!』

 こいつ軽く流しやがったと思いつつ、雄の言葉を聞いて俺は目眩を覚えた。それと同時に参加できないことに心から安堵した。そんなもので折角の休みを潰したくはないし、常識で考えれば高町さんとその彼氏さんに迷惑がかかる。そういう関係なら、二人でいたいと思うのが人の心ってものだと思うが、違うか雄?

『それはごもっともだけども彼女達の流儀は違うんだ。もうね、俺以外の参加メンバーはすっげぇ張り切ってるんだよ』

 どこかで聞いたようなタイトルとセリフだが聞き流そう。……雄風に言えば尾行メンバーというのが誰か知らないが、「三日間ぶっ続け~」のメンバーではないのは確かだろう。あのメンバーでそんな物好きは雄ぐらいしかいない。というか、俺と雄を除いたメンバー全員に彼女がいるというのは雄には内緒だ。
 ただ言えるのは誰がメンバーであろうが、俺が参加できないのは変わらない。

『ああ、言い忘れてたけど、メンバーってのはアリサさんに月村さん。フェイトさんに八神さんと、かの似非新聞記者さん。それと俺という豪華ラインナップだ』

 ……それは色んな意味で終ってるな。友の彼氏をただ見たいだけじゃないのか?もしくは妬みで見に行くのが七割ほどいるだろ。それ以前に、テスタロッサさんまでも参加ですか……。あの人はそういう人だとは思わなんだ。人間わからんものだなと俺が思っていると

『俺は強制参加なわけなんだが、上杉。お前は来るよな?つうか来てくれるよな?俺だけ生け贄にしないよな?』

 今にも泣きそうな勢いで畳みかけてくる雄。……スマン雄。俺はお前を裏切ることしかできないようだ。ああ、タイミングが悪いんだ。まあ、俺が新潟にいると誰が想像するだろうか?いないだろうなと心の中で思いつつ携帯を耳から遠ざけて、俺が今いる場所を伝えると雄は大声で

「どうして海鳴市に居ない!居れないのか?居たくないのか?居る度胸もないのかぁ!?」

 と叫んだのだった。ああ、遠くで蝉の鳴く声が聞こえるな――



    リリカルなのは――Lonely Stars Side Stage――
          02「恋のサマーセッション」






「……と、いうわけで上杉の野郎は逃亡しました。コンチキショウ」

 というわけかどうか知らないけども俺、畑山雄は駅前に集まった今回の「なのはとユーノのデート現場尾行隊~恋のサマーセッション~」(命名アリサさんと八神さん。サブタイトルは俺)の参加者に上杉逃亡を説明した。あの野郎、何が先祖の御参りのため新潟に行っているだ。上杉謙信が上杉の先祖なわけねぇだろうが!帰ってきたとしても今日の夜遅くじゃ意味がねぇYO!

「そっか、ショウは新潟に行ってるんだ」

 と、少し寂しそうさん表情のフェイトさん。あ、あの野郎、フェイトさんにこんな表情させるとは一体どんなマジックを使いやがった!? とけないままマジック!?だいなしにするのはいつも自分自身のミステイクってやつか!?

「あいつ、せっかく面白いことになりそうな時にいないなんてもったいないわね」

 少しむくれた表情のアリサさん。先ほどアリサさんと八神さんの話を聞いていたら、どうやら遊びで上杉に女装させて二人の近くに行かせて、デート現場の実況させる予定だったようだ。上杉が女装したら、上杉を知らない人が見たら本物の女だと思うんじゃないだろうか?きっと、そうだろうな。この人たちならそのぐらい、本気のメイクを上杉にするに違いない。(上杉の顔が中性的なのも影響するだろうけど)

「上杉がいないとなると、二人の様子を実況中継役どないするん?」

「はやてちゃん。それなら、ここに適役がいるよ」

 と上杉流に言うと「似非新聞記者」さんを笑顔で見る月村さん。確かにこの人なら適役だな。下手に上杉を女装させるよりも、自称新聞記者さんがコソコソ動いていたほうが絵になるよな。まあ、警察に捕まって何日か拘留されたほうが世のため(主に上杉と俺のため)かもしれないけど。

「なんだか、誰かに酷いこと言われているような気がするのですが……」

「気のせいじゃないかな?」

「彩、あんたにそんなテレパシーみたいなものは無いでしょ?」

 と、フェイトさんとアリサさんがツッコミ(?)を入れると、自称新聞記者さんは首を傾げつつ笑みを浮かべていた。うむ、どうやら俺が心の中で思っていることがバレかけているようだ。って、んなことありえねぇがな(ショボーン顔で)

「あ、どうやら来たみたいね」

 アリサさんが瞬時に物陰に隠れる。俺も隠れて駅前にいる高町さんの方を見ると、そこには長い髪を後ろでまとめて縛っている男?女?がいた。あれがどうやら噂のユーノって人らしい。なんでも十五歳と俺達と同い年ながらイギリスのとある図書館の館長らしい。高町さんとは幼馴染だとかで、日本に時々来ていて、日程が合えば遊びに行く仲だとか。
 というか、若干十五歳で図書館館長の役職に就けるってイギリスって国、半端ねぇ。そんなに人手がいないのか?
 遠目から見ただけだからよくわからないけども、なんかひ弱そうなんだよなぁ。あんなのでよく館長職できるよな。
 しかし、休みにわざわざ高町さんに会いに日本に来るということは、やっぱりそういう関係なのかねぇ?

「久しぶりだよね。二人だけっての」

「そうやね。遊ぶって言ったら、私らも一緒の時が多いんよね」

 フェイトさんと八神さんの会話を聞く限りでは、どうやらフェイトさん達とも友達の関係のようだというのがわかった。も、もしやハーレムを目指してるとか!?

「なんでそうなるのよ!」

 スパンと小気味のよい音を立てて俺の頭が叩かれた。ああ――こんなことをするのはあいつしかいねぇ。つうかなんでこんなところにいるんだよ、由佳。扇子を片手に持ったまま目の前にいる由佳はサラリと

「だって、私も呼ばれたから」

「あ、由佳ちゃん。来てくれたんだ」

 月村さんが先ほどと同じように笑顔で由佳と会話している。簡単で悪いが石本由佳は俺の幼馴染みってやつだ。俺に対してはかなりキツイ態度を取ってくるのが難点ではあるが、他の男子からは好印象なのは地球滅亡まで謎になるだろう。
 今は月村さんたちと同じクラスで、結構仲がいいそうだ。どこに隠し持っているかは不明だけども、扇子で人の頭を平気で叩く女だと付け加えておこ――

「イテェ!」

 また扇子で叩かれた俺であった。さっきから人の思考を呼んでるかのように叩いてくる由佳。こいつ、ニュータイプか!?

「雄、あんた声に出してたわよ」

「え……アリサさん、マジですか?」

「マジやで。本気と書いてマジと読むぐらいにや」

 と、アリサさんの隣にいる八神さんは呆れ顔を浮かべていた。それぐらいマジなんですか!?つ、つまり……。背後から恐ろしい笑い声が聞こえ、それを聞いた俺は恐怖のあまり動けなくなった。こ、この笑い声になった由佳は本当にまずい。何がどうまずいって言うと、満塁で好調の四番バッターにど真ん中ストレートを投げるぐらいやばい。

「フフフ……そんなこと思っていたのね、雄。幼馴染みとしてその間違った考えを”修正”してあげないとね……」

 ひょ、表情は笑顔なのに目が笑ってねぇ!!生命の危機を感じて俺は逃げ出そうとするも、月村さんが背後でガッチリと動けないように俺の腕を後ろで組むように掴んでいた。い、いつの間に!?

「ごめんね、畑山くん。由佳ちゃんに頼まれちゃって……テヘ」

 とこれまた笑顔がとても似合う月村さん。「頼まれちゃって、テヘ」じゃねぇぇぇ!!

「ふふふ……雄、覚悟はいいかしら?」

 俺の目の前に迫る閉じた扇子を右手に構えた由佳。うむ、扇子は人を叩くものじゃないよね?ね、ね?
 ……ああ、わかってるさ。もう逃げられねぇことぐらいおれだって理解してらぁ。男の俺が逃げられないぐらいの力(技術?)で月村さんに腕を掴まれているんだ。諦めるしかない。上杉、どうやら俺はここまでのようだ――




「?」

 聞き覚えのある声で断末魔の叫びに似た声が聞こえたような気がして、わたしは後ろを振り返った。振り返って周囲を見たけども、わたしの知っている人の姿は見えなかった。あれ?気のせいかな?

「どうしたの、なのは?」

 隣を歩いていたユーノ君が心配そうにわたしに声をかけてくれる。知り合いの声が聞こえたような気がしたんだけど気のせいだったと伝えると

「疲れたまってるんじゃ?」

「ち、違うよ。そんなのじゃないよ」

 左手を大きく左右に振って否定する。確かに疲れは少しあるけど、このぐらいは大丈夫。最近は休みの日が少しだけ増えてきているんだよ?それにユーノ君だって目の下にクマができてるよ。また三日間ぐらい寝てないでしょ?

「あ、あはは……相変わらず鋭いね、なのは」

「ユーノ君が鈍いだけ」

 少し膨れてから、お互い顔を見合せて笑い合う。ユーノ君と出かけるなんて本当に久しぶり。今月は三週間の教導で仕事していて忙しかったし、ユーノ君の方も無限書庫の仕事で忙しかったみたい。
 偶然にもわたしたちの休みが重なっていたことがわかったのが一昨日のこと。なら二人でどこか行こうと、ユーノ君から誘われた。ユーノ君とお出かけするのも久しぶりだったから「いいよ」とわたしは即答して、どこに行こうかって話になったんだけど……。

「どうしよっか、ユーノ君」

「うーん……どうしよう」

 とお互い言って、またお互いの顔を見合わせて笑いあう。やっぱりユーノ君と話していると落ち着く。フェイトちゃんと比べるとかはできない。ユーノ君と出会ってから一緒にいた時間は多かったよね。
 闇の書事件が終わってからかな?局員としてわたしは空を駆けて、ユーノ君は無限書庫司書長として多忙になったの。フェイトちゃんたちも交えて出かけることは時々あったけど、二人でってのは本当に久しぶり。

「どうしたのなのは?急に笑顔を浮かべて」

 何か嬉しいことでもあった?と聞いてくるユーノ君。あれ?わたし笑顔になってた?気づかなかった。うん、嬉しいことがあったよ。

「何?」

「ユーノ君と久しぶりにお出かけできることだよ」



 うーん……。やっぱりあの二人って仲がいいよね。ユーノより若干遅くなのはの友達になった私でもそう思う。なのはとユーノの間に絆みたいなものがあるとつくづく思うんだけど、どうしてそれが恋愛の方に発展しないのか未だに謎なんだ。

「なのはちゃんほんまに楽しそうやなぁ」

「そうね。なんだか久しぶりに見た気がするわ。あんな、なのはの無邪気な笑顔」

 確かに。”あれ”以来、どことなく無理に笑っている感じがあったけど、今のなのはは普通に笑っている。ホッとするのと同時に、そういう笑顔にさせるユーノに嫉妬してしまう私がいた。

「でも、そのユーノって人、どういう関係のつもりなんですかね?」

「雄、関係も何も高町さんとユーノさんって恋人同士じゃないの?」

 と、二人の詳しい関係を全く知らない畑山くんと由佳。さ、さっきまで畑山くん頭真っ白な状態になっていたのに復帰するの早いよね?それに由佳。さっきからチラチラと畑山くんに右手に握る扇子みせるのは止めておこうよ。子犬のように怯えているからね?

「フェイトちゃん、あの二人の間はあんなもんや。そうっとしといてや、な?」

「いやいやいや!それ間違った認識だから!俺そんなドMじゃなうみゃぎゃ!?」

「馬鹿雄!あんたは黙ってなさい!」

 今日何度目か数えるのも面倒になってきたけど、由佳に叩かれる畑山くん。あれだけ強く叩かれてるから、いつか怪我しそうなんだけど大丈夫なのかな?由佳、少しは手加減してあげたら?

「フェイト……そうしたら雄のためにならないじゃない」

「い、いや……人の頭を叩くって行為は十分ためになってないからな?」

 片手で叩かれた所をなでつつヨロヨロと立ちあがる畑山くん。確かに私もそう思う。もう少し優しくしてあげないと畑山くん倒れちゃうよ?

「あ、二人が移動するみたいよ。行くわよ」

「あ、アリサちゃんちょっと待って」

 と先に行くアリサを追うすずか。二人の様子を観察するって言い出したのがアリサなんだけど、今の様子を見る限りだと二人の様子を見て楽しんでいるだけなんじゃ?じゃなければ、二人っきりにしてあげるのが普通だと思うんだ。

「フェイトちゃん。あのアリサちゃんのことや。楽しみつつ二人の関係が気になっとるんやと思うで?」

「やっぱりそうなのかな?」

 はやてと話しつつアリサ達の後に続く。その後ろで畑山くんが断末魔の叫びに似た声を上げていたけど……。怪我してないよね?

「大丈夫よ、フェイト。雄はあのぐらいで怪我するような男じゃないわよ」

 といつの間にか私の隣を歩いていた由佳が怒った表情を浮かべながら言った。相変わらず由佳は畑山くんに厳しいね。私が畑山くんと話すようになる前は、野球部のエースに対して厳しい態度を取っているとしか聞いていなかったし、由佳が誰かに怒っている時もその野球部のエースの子が怒られているんだなとしか思っていなかったんだけど、無関心すぎたかな。

「フェイト、あなたあまり遅くまで学校にいないからわからないかもしれなでしょうけど、これが私と雄の間では日常茶飯事なのよ」

「せやせや、由佳ちゃんと畑山は『仲』がええねん」

 と、何故かニヤニヤと笑みを浮かべるはやて。ああ……そういうことか。はやての言い方でなんとなくだけど、二人の関係を理解してしまった。畑山くんって結構鈍感なんだ。由佳みたいな子がせっかく応援しているのにね。

「なっ……は、はやて!何言ってるのよ!私と雄が仲いいだなんて、どこに目ついてるのよ!」

「ここやけど?」

 由佳の言葉に自分の目を指さすはやて。わかっててやってるよね、はやて……。「もちろんや」と言って私に親指を立ててニコッと笑ってみせるはやて。それを見た由佳は怒ることも止めて呆れた表情を浮かべていた。その後も話しをしつつ、なのは達の後を追う私達だった。



「で……誰があの二人の会話を実況するんだ?」

「実況って……解説は誰がするのよ?」

 現在の時刻は十二時を少し過ぎていて、なのはとユーノはオープンテラス式の遊園地内のお店で食事をするみたいだ。私達はなのは達から見えない位置で作戦(?)会議中。私以外はその会話を聞きたいようで、どうしようかと悩んでいる最中。そ、そこまでする必要ないよね?

「いややなぁ、フェイトちゃん。そこまでする必要あるで?」

「そうそう。あの二人がどこまで進展しているか知る権利が私達にはあるわ」

「はやてちゃん、アリサちゃん。二人ともノリノリだね」

 す、すずか。二人を止めようとするの放棄しないで。お願いだから。朝からずっとこんな会話していると頭痛くなってくるよ。って、畑山くん。なんで段ボールなんか用意してるの!?そ、それ以前にどこから持ってきたの!?

「いやぁー、会話を盗み聞議するにはこいつで近づく必要があるかなと」

「雄……あなた一度だけ、ううん。一生病院から出てこないように、私の親戚のお医者様に頼んであげるわよ」

「ちょっと待て!何、その哀れな人を見るような目!?由佳、お前段ボールミッションを知らないのか!?」

「そんな怪しさ満点の段ボールが近くにあったら、普通に考えれば誰だって不審に思うわよ!」

「由佳ちゃん。いざっちゅう時は病院に来てもらえばええんや」

 あくまでなのは達に聞こえないような声で口喧嘩を始める畑山くんと由佳。それに水を差すようなことを言うはやて。はあ……また始まったね。彩、どうにかできないかな?あ、できない?そっか……だよね。アリサとすずかは?二人も無理?二人を無視して話し続けよっか。うん、そうしよう。

「でも、皆さんよく見てください。高町さん達の周囲、畑山さんが持ってる段ボールと同じ物が置いてありますよ?」

「「「えっ?」」」

 彩の言葉に私たち全員はなのは達の方を一斉に見た。そこにはなんでかわからないんだけど、段ボールがあっちこっちに置いてあった。なんでこんな好都合で置いてあるんだろう。もう頭痛がさっきから止まらないよ。

「大佐、指示を」

 みんなに対してビシッと敬礼をする畑山くん。頭に被った段ボールが何とも言えないんだけど、畑山くんを除いた全員は諦めた様子で「勝手に行ってきていいわよ」と言い出す始末。どうなるんだろう……。
 畑山くんは「了解した」と言ってから段ボールの中に入ると、二人にわからないように近づいていった。しかも、他の人にも段ボールが動いているとわからないように。畑山くんは何か特殊な訓練でも受けたことあるのかな?実際はそんなことないってこと知っているんだけど、なんていうか様になっているんだよね。

「あの馬鹿。ゲームのやり過ぎなのよ」

 とは由佳の言葉。由佳が言うには畑山くんは結こ「かなりよ!」……ゲーム好きらしい。時々ショウも畑山くんとゲームをしているみたいなんだ。でもショウは、畑山くんとするのはスポーツゲームだけだって言ってたんだけどな。

「その影響で、某蛇さんのマネしとるわけやな?畑山くんとは気が合いそうやわ」

「はやて……あんたも大概にしときなさいよ?」

 呆れた表情のアリサ。そういえば、はやても結構ゲームが好きなんだっけ?でも、よく時間あるね。私なんて資料とか読んでると日が暮れていることが結構あるのに。

「フェイトちゃん。少し息抜きしたほうがいいよ?」

「そうね……ちょっと頑張り過ぎじゃない?」

「そう……かな?」

 すずかとアリサの言葉に私は首を傾げる。頑張り過ぎなのかな。自分ではそう思っていなんだけど。っと、畑山くんが無事になのは達の近くまで行けたみたいだね。

『こちらROCK man。無事に目標ポイントに到達した。指示を頼む』

「あのねぇ雄。いくら蛇だと被るからってそのネーミングセンスは無いわ」

「由佳の言う通りだわ。さすがにそのネーミングセンスはどうかと思うわよ?」

 由佳とアリサが無線越しの畑山くんに対して厳しい言葉を投げかける。ロックマンって言うと固い男性?う……ん、意味がわからないね。首を傾げていると由佳が不機嫌そうな表情を浮かべて

「雄と上杉くんの好きなアーティストの曲名よ。あの馬鹿、一体どういう神経しているの!」

 ああ、そういうことなんだ。畑山くんの好きな曲ってショウの話しを聞いている限りだと、一般離れしているとか何とか……。でも、ショウも好きなアーティストってことはまだ一般よりなのかな?

「まあまあ、由佳ちゃん落ち着きや。あれや、小説のタイトルに曲名使う小説家もおるんやし気にしたら負けやで?」

「そんな小説家いるなら会ってみたいわね!」

 由佳を宥めようとはやてが声をかけたんだけど逆効果だったみたいで、プイッと明後日の方向を向く由佳。畑山くん、後で殴られるの確定だね。ご愁傷さま……。でも、由佳の言葉に同意だね。そんな小説家いるなら会ってみたいよ。

『えーっと……なんか「夏休みは何してた?」とか、「仕事の方はどう?」とか高町さんがユーノって人と話している。どうぞ』

「もう少し話しの詳細を聞きとってみてください。どうぞ」

『了解した』

 無線越しの畑山くんに指示を出す彩。詳しい話しを聞かれても大丈夫かなと不安を覚えて、チラリとはやての方を見る。私の視線に気づいたはやてが『公共の場で「こっち側」の話はしないやろ』と念話を送ってきた。さ、さすがはやて。視線だけで私の思っていることを理解するなんて。

『……図書館の整理のために、ユーノって人が三日間ぶっ続けで働いていたことをなぜか高町さんが知っていて、それを今追及してる。こっちから高町さんの表情は見えないけど、笑顔っぽいな。声的に』

「どういう声よ……」

 と、右手を額にあてるアリサ。ユーノが三日間連続で仕事していたことをなのはが追及しているのに笑ってるってことは……

「あ、あれや……なのはちゃんの怒った時に発動する、目が笑ってない表情や」

「発動って……大げさだよ、はやて」

 ガタガタ震えるはやて。言いたいことはわかるけど、さすがにそれはなのはに失礼だよ。確かになのはが怒った時は怖いけど、怒っている人を思ってのことだから……。でも、相手のためだからって全力で砲撃するのはどうかと思うんだ。それにははやても同意してくれた。

『こちらROCK man。現在、ユーノさん……でいいのか?が全力で高町さんに謝ってる。どうぞ』

「「「「全力で謝ってるって……」」」」

 彩以外の全員の声が重なる。なのは……いくらなんでもやりすぎなんじゃ?確かにユーノのこと心配しているのはわかるけど、さすがに全力で謝らせるのはどうかと思う。
 そ、それで畑山くん。それ以外で二人の雰囲気はどうかな?

『雰囲気ですか?……確かにいい感じだけど、なんかもう一歩二歩足りないような感じが……。どうぞ』

「雄に言われるようじゃ、なのはとユーノさんの関係はまだってことね」

 畑山くんの報告を聞いて由佳が盛大にため息を漏らした。それって暗に畑山くんも鈍感というかそういうのに疎いっていうことだよね。どうして私の周りってこういうのに疎い人ばっかりなんだろう……。

「フェイト……あんたが言える立場じゃないでしょ」

「せやな……上杉も大変やな」

 と、なぜかアリサとはやてが呆れた表情で私の発言にため息を吐いた。え、え?なんでそこでショウが出てくるのはやて?

「フェイトちゃん……五月に上杉くんとの関係について報道されたよね?」

「あ!そういうこと……」

 すずかに言われてやっと気づいた。あの時、私とショウの関係を勘違いした人(主に男子)がショウに対して嫌がらせをしたんだった。私の行動が原因になっているのは確かだもんね。そう考えると……私も鈍感!?

『それらについては後で追求させてもらうとして……どうやら昼食後は観覧車に乗るみたいだぞ?』

「つまり、あれやな?ユーノは密室でなのはちゃんを押し倒すつもりやな?」

 ちょ、ちょっとはやて何言ってるの!?そんなことユーノがする訳ないよね!?アリサも「有り得るわね」って呟かないで、お願いだから。すずか……ニコニコ笑ってないで何か言って。

「うーん……私としてもそっちの方が面白いかな?」

「……ねえ由佳。私の感覚がズレてるのかな?」

 みんなの考えが私と違っていたので、不安になって由佳に聞いてみると

「大丈夫よフェイト。それが普通の思考よ」

 と由佳は疲れた表情で言ってくれた。よかった。みんな私と違う意見だったらどうしようかと思ったよ。冷静になって考えると、観覧車に乗られたら二人の様子がわからないね。すぐ後に私達も乗ったら後をつけているのがバレちゃうよ?

「せやなぁ……なら畑山に段ボールのまま乗ってもらうっちゅうのはどうや?」

『だが断る!』

 間髪入れないで無線越しに拒否を伝えてきた畑山くん。素早い回答だね、畑山くん。

『そりゃそうですよ。段ボールのまま行ったら、乗る前に係員に止められるのがオチですし』

「雄にしては珍しく正論ね。日常でも正論を言ってくれると私としても楽なんだけど?」

 か、かなり酷い言い方だね由佳。ねえ、はやて。もちろん冗談で言ったんだよ……ね?本気じゃないよね?……え?本気だった?いやいや。さすがに無理だからね?そんな怪しい段ボールがあったらさすがに係員の人が止めるからね?
 そうこう話しているうちになのは達が移動を開始した。あ、さり気なくだけどユーノがなのはの手を握った。うん。そういう姿を見ているとカップルのような感じがするよ。でも違和感があるのは仕方ないかな?って、なのは。手をつないでるのに平然としないであげて。ユーノが可哀そうだよ?

「なのはちゃんも相変わらず鈍感やなぁ……。ユーノが哀れに見えるわ……」

「はやてに同意ね。他人の痛みとか悲しみとかには敏感なくせに、どうして恋愛には鈍感なのよ」

 とブツブツ言いながら二人の後をつけるアリサとはやて。その後に続くように私達も歩いているんだけど、その後ろにまだ段ボールで移動している畑山くんがいた。何時までしてるつもりだろ?と思いつつみんなでなのはの恋愛に対して鈍感の謎について話していた。


 観覧車に乗ったわたしとユーノくんはしばらくの間、無言だった。どうしてかと言うと、実はお互いこういうのに二人っきりで乗るのは初めてで、向き合って座ることになれていないから……かなぁ?
 でも、こういうのも悪くないなと思う。お互い何も言わないけどどことなくお互いの考えていることがわかっているような……そんな感じかな。ユーノくんとは長い付き合いになるし、色々と心配かけたりもしたもんね……。

「ねぇ、なのは」

「にゃ、なに?」

 突然ユーノくんが口を開いたので何と聞こうとして口を噛んだ。うう、どうしてこういう所は昔から変わらないんだろう。って、ユーノくん笑わないでよ。

「ごめんごめん。なのはらしくってつい」

「むう。それってわたしがあまり成長してないって言ってる?、ユーノ君」

 頬を膨らませてユーノくんに抗議する。わたしのそんな姿を見て、ユーノくんは笑いながら

「ごめんごめん、そういう意味じゃないよ」

 なら、どういう意味かなユーノくん?と首をかしげて聞いてみると

「なんて言うかさ、なのはらしさって言えばいいのかな?それが変わって無くてホッとした……うん、そんな感じ」

 ああ、そういうことを言いたかったんだね。うーん、自分では意識したことないからよくわからないな。

「ねえ、なのは」

 真剣な表情のユーノくん。わたしも真剣な表情で「なに?ユーノくん」と聞き返すと

「あ、えとさ……なのはが『あれだけの大怪我』をしたのにまだ『空を飛ぶ理由』ってあるのかなって、知りたくてさ」

 『あれだけの大怪我』――もう四年前になるかな。わたしが任務から帰還中に襲撃を受けて、それまでの疲労の影響で大怪我を負ったこと――に関してユーノくんが初めて聞いてきた。
 もしかしたら二度と普通に歩くことすらできないかもしれないって言われたっけ。だから……ユーノくんはわたしのことを思って今まで聞いてこなかったんだと思う。
 わたしがまだ『空を飛び続ける理由』。色んな理由が思い浮かんだけど、やっぱり一番大きい理由は――

「わたしね……空が好きなの」

「空が?」

 「うん」と頷いて、わたしは窓越しに見える空を見る。今日が晴れでよかった。これだけ綺麗な空を見ることができるから。その姿勢のままわたしの思っていることを言葉にする。

「ユーノくんに魔法を教えてもらってから、ずっと空を飛んできてたでしょ?それで気づいた時には空にいることが好きになってたの。
 嫌なこととかあっても空にいけばなんて言えばいいかな……嫌なことを忘れるんじゃなくて、自分の中で冷静に受け止められるって言えばいいのかな?
 それにね、どんな世界の空をひとりでいても『ユーノくんやフェイトちゃん達と一緒の空にいるんだ』って思えるんだよ」

 自分でもおかしいと思うけどねと付け加えてわたしは小さく笑った。ユーノくんは「おかしくはないよ」と言ってわたしと同じように空を見る。

「だからね、わたしが大好きな空を一緒を飛ぶ人たちのことを守りたい……ううん、違う。その人たちの力になりたいんだ。だからわたしは空飛び続けたい。自分が本当に『無理だ』って思える瞬間まで」

 もう一度空を見る。雲ひとつない青空。こんな日に空を飛んだらどれだけ楽しいだろう。よし、今度ユーノくんと休みがあったら空を飛んでみよう。きっと楽しめるから。

「そっか。だから空にこだわっていたんだね。……なら僕は、なのはが『疲れた』って時に休むことが出来る場所を守ろうかな」

「え?」

 ユーノくんの言葉を聞いてわたしはユーノくんを見る。ユーノくんはにっこりと微笑んで

「そういう場所があればなのはを無理やりにでも休ませることもできるしね」

「そ、それはユーノくんも同じだよね!?」

 意地悪そうに笑うユーノくん。うう、ユーノくんだって一週間全く休まないで仕事したりして、倒れた時だってあるのにそういうこと言うかな。
 倒れた時にユーノくんに大量に仕事を依頼していたのがクロノくんだった時には、ニッコリと笑って模擬戦申しこんだんだっけ。もちろん五割程度で模擬戦したんだけど、クロノくんが必死に砲撃を避けていたのは印象に残ってる。

「でも、いつでも帰れる場所はいくつあってもいいと思うよ?なのはの家もそうだし、僕もそういう場所になれるよう頑張るよ」

「ユーノくん……ありがとう」

 ユーノくんの優しい言葉に涙が出そうになる。本当ならユーノくんはわたしが空を飛び続けることを止めたかったんだと思う。けど、わたしの我儘を認めてくれて「いつでも帰ってきていいんだよ」と言ってくれた。本当にありがとう、ユーノくん。どんなことあってもわたし頑張る。ユーノくんの優しさに応えたいから。

「もしかしたら僕じゃ頼りにならないかもしれない。でも覚えておいてくれないかな?なのはのことを心の底から心配している人がいるってことを」

「ユーノくん……ありがとう。でも……」

 ユーノくんの優しさに涙が出そうになっちゃった。でも一つだけ譲れないというか認められない言葉があったの。ユーノくんが不思議そうに私の方を見て

「でも?」

「ユーノくん、自分で頼りないけどって言ったけど、ユーノくんは十分頼りになるんだよ」

 あの事件の後――わたしが空に飛ぶことを諦めそうになった時――だって、ユーノくんが側で励ましてくれなかったら今ここにわたしはいないと思う。側で励ましてくれたのはユーノくんだけじゃないけど、ユーノくんのおかげなんだよ。

「時々仕事しすぎてみんなに心配かけることもあるけどね」

 出来る限りの笑顔でユーノくんに伝える。ユーノくんは目を閉じて小さく笑顔を浮かべて小さく何かを呟いたけど、その呟きが何なのかは聞こえなかった。むぅ。また、自分の駄目な所呟いたでしょ?そういうネガティブなのはユーノくんの悪い所だよ。

「ち、違うよなのは。僕は――」

「冗談だよ、ユーノくん。でも、目の前で小さく呟くのは止めて欲しいな。気になっちゃうから」

  そう言ってわたしは小さく笑う。ユーノくんは「そういうことか」とだけ言ってわたしと同じように小さく笑っていた。ありがとうユーノくん。いつでも帰れる場所があるというのは本当に嬉しいよ。うん、大丈夫。独りで空に行っても頑張れるから――




「……で、どうなのよ由佳」

「いきなり話を振らないで頂戴、アリサ!!」

 現在私の目の前ではアリサが由佳の恋愛について追及していた。どうしてこういう状況になっているか。なのは達が観覧車に乗ったので、これ以上二人の様子を見るのは無理と判断して、近くの喫茶店で少し話していた。
 結局こうなるんだ……。なのは達どんな話しているんだろう。

「ふふふ……こうなったら私が得意とする盗聴で二人の会話ごぉ!?」

「駄目だよ彩ちゃん。そんな犯罪行為しちゃ」

 と、暴走しかけていた彩の頭を叩くすずか。彩、すごく痛そうなんだけど大丈夫かな。すずか、ちゃんと手加減した?

「七割ぐらいで叩いたから大丈夫だと思うよ?」

 と疑問形で返してくるすずか。うん。それ大丈夫じゃないよねと思ったけど、彩が犯罪に手を染めないのを止めたからいいかなと思い

「なら大丈夫だね」

「そ……それ大丈夫じゃないですよね?」

 少し投げやりに私が言ったら、畑山くんが律儀に(?)右頬を引き攣らせながら私達の言葉を否定してくれた。うん、わかっているんだけどもう疲れちゃって。面倒だからじゃないよ?ホントだよ?

「ぶっちゃけ、面倒だからですよね?まあそれとこいつ(石本由佳)の恋愛話はどうでもいいとして、皆さんはそういうのはどうなんですか?」

 畑山くんの言葉に私を除いたみんなの空気が凍る。比喩通りに。畑山くん、言っちゃいけない言葉だよ、それは……。特にはやてとアリサには。

「なんでや……なんでフェイトちゃんやなのはちゃんは人気あるんに私だけないんや……。誰がチビ狸や……」

「そうよ。私なんて『ツンデレの女王』なんて男子に呼ばれているのよ!?誰がツンデレよ!」

 ほら……。畑山くんの何気ない言葉で、はやてとアリサが自分たちの境遇について文句言い始める。それとは別に由佳が「フフフ」と低い声で笑ってる。たぶん畑山くんが言った「こいつの恋愛話はどうでもいい」って言葉にスイッチ入っちゃったんだと思うんだ。後で殴られるかもしれないけど自業自得だからね、畑山くん?
 すずかはすずかでニコニコと笑ってその様子を見守っているだけだし、畑山くんははやて達の様子を見たからか顔が引き攣っていた。原因は畑山くんなんだけど、どうにかできそう?と小さな声で聞いてみる。

「無理ッス!!」

 と小さな声で返してくれた。うん、畑山くん。今すぐ逃げないと危ないよ。命が。

「雄……覚悟は出来ているでしょうね?」

「せや。……そんなことを聞くっちゅうことは、命が惜しくないっちゅうことやろ?」

「そうね。言って良いことと悪いことがあるって教えてあげるわ」

 はやて達の雰囲気は、私でも一歩足を後ろに下げてしまうほどの物で、さすがの畑山くんもいつでも逃げられるような体勢でジリジリと後ろに下がっていた。

「はやてちゃん達。程々にね」

「すずかさん、間違ってますよ!止める所ですよね!?」

 すずか、止められないからってそういうことを言うのは止めようね?火に油注いでいるのと同じことだからね。……え?「ごめんフェイトちゃん。ついうっかり」じゃないよね!?わざと言ったよね!?

「……ダッシュ!」

「「「あ、逃げた!」」」

 この場の雰囲気に耐えられなくなったのか、畑山くんは回れ右をして全力で走り出した。賢明な判断だね畑山くん。その後を何か言いながら追いはじめる由佳とはやて、アリサの三人。私とすずかはその様子をただ呆然と見ていた。彩はその様子を写真に撮っていた。
 学校が始まってからしばらくして、学校で畑山くんが女子三名に追われていて、どうやら三人と同時に付き合っていたという嘘話が流れ、由佳が爆発していたというのはまた別の話し。
 その後、私達は完全になのは達を見失ってしまい、二人の様子を見ることが出来なくなって、結局みんなで色々なアトラクションで遊んで帰ったんだけど、そのアトラクション代を払ったのが……

「なんで俺なんですか?」

 と、右頬が由佳の扇子で叩かれた影響で少し腫れている畑山くんだった。払うことになった理由は「畑山のせいでなのは達のデートの様子見れなくなったからよ!」とアリサが言ったから。
 さすがに全員の代金を肩代わりしてもらうのは悪いよねと思って、私も出そうとしたら

「いいのよフェイト。これは雄のためなんだから」

 と由佳に止められた。でも、と言ったらすごい勢いで「フェイトは払わないでいいの!わかった?」と目の前で言われたので、私は頷くしかなかった。ごめん畑山くん。

「うう……今月の小遣い全部消えた」

 と虚ろな目で空を見上げる畑山くんの姿は、哀愁が漂っていた。


「それで、俺に何用(なによう)だ?」

 雄から電話があった五日後の夏休み最終日。ちょうど休暇だった俺は家にいた。「最初と最後の締めに登場だけってのも寂しいな」とどこからか変な電波を受信しながら、目の前でむせび泣く雄に律儀にもお茶を出す。

「どうして俺がさ、コクコク……。全員分のアトラクション代を出さなならんのだ!そもそも、恋のサマーセッションはどこさいったべ!!」

 と、茶を飲みながら器用にダン!と人の家のテーブルを力強く叩く雄。それに眉を顰めるも、注意せずに俺も茶を飲む。やれやれ、どうして朝から雄の愚痴に付き合わないといけないんだ。
 そもそもこの三日間ほとんど仕事漬けだったんだぞ?雄には言えないけどな。しかし、三日間で違法魔導師の研究所四ヵ所を調査して、その日のうちにその調査結果を出すなんてふざけるのもいい加減にしろと言いたくなった。
 一応「調査結果提出なんて嘱託魔導師がする仕事じゃないよな?」とクロノに聞いたら疲れ切った表情で

「いいからやれ」

 と言い放って自分の仕事に専念していた。ああ、わかっていた。きっと無駄だということぐらいな。お互い無言で書類作成をして、クロノと共に休暇に入って今に至る。
 今日は一日ゆっくりと過ごそうと思っていた俺だったが、結局雄の愚痴に一日中付き合わされて夏休みを終えるのだった。




Next Side Stage03 is...
「タイトル未定」
コメント
コメントの投稿
Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://lonelystars51.blog.fc2.com/tb.php/54-025c81c5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

総来訪者数

プロフィール

Are you ready to Action?

リンク

カレンダー

カテゴリ

最新コメント

最新記事

Message

検索フォーム

QRコード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。